第20回 熊本地震被害⑤ 塀について(1)

益城町ではブロック塀が方々で倒れていました。朝日新聞の記事に福岡大古賀教授が益城町のブロック塀の被害状況を調査した結果が出ていました。ブロック塀258カ所を調査して、建築基準法施工令で決められている「高さ2.2メートル以下」「厚さ15センチ以上」などの基準をみたした塀28カ所は倒れておらず、残りの塀は基準をみたしていない塀でそのうち175カ所が倒壊していたそうです。
写真 朝日新聞の記事(2017.3.6)。壊れた塀(2016年6月撮影)。

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第19回 熊本地震の被害④

熊本市東部に隣接する益城町に行きました。宮園地区や堂園地区を通る県道28号はうねり、ひび割れ、多くの家が倒壊していました。その中には古い家だけではなく新しい家も、鉄筋コンクリートの建物もありました。平屋の家は比較的残っていました。こんなに激しい揺れを経験した住民の人たちの恐怖はいかばかりであっただろうと思いました。

立派な瓦葺きの2階建て和風建築の1階部分が倒壊しているのを幾つも見ました。工法は近代工法で伝統建築ではありませんでした。もし揺れた際に瓦が落ちて重量を減らすことができ、また土台がコンクリートでなく石場立てで免震効果がはたらいたらどうだったのかと思いましたが、石場立ての伝統建築は残った中にも倒壊した中にもありませんでした。

営業している食堂が1軒ありました。平屋の木造建築でした。食器は壊れ建物にひびが入ったとご主人は言っていましたが、店の外も中も綺麗に見えました。

写真 2016年6月撮影

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第18回 熊本地震の被害③ 熊本城

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丁度熊本に泊まった夜のテレビで、熊本城はかつて地震で壊れたことが複数回あったと放送していました。そんなところにどうして又城を建てたのかと思いました。地形がよほど戦うのに適していたのでしょうか。

熊本城のすぐ前にキャッスルホテルがあります。そこは宿泊部門は休業中でしたが1階のレストランは営業していました。料理長の話では、前震の後すぐにホテルにかけつけた時に1階のレストランはさほどでもなかったそうですが、11階のレストランの食器はみな割れ、しかもその破片が部屋の中央に集まっていたということでした。興味深い現象です。
写真 地震で崩れた熊本城の石垣

第17回 熊本地震の被害② エクスパンションジョイント2

 

 

エクスパンションジョイントが壊れたマンションと同じサーバスマンションが歩いて数分のところにもう2カ所建っていたので行ってみました。いずれもそれぞれ複数棟をエクスパンションジョイントで結んだもので、その2カ所のマンションのエクスパンションジョイントも壊れていました。一つは2棟が横に並び、もう一つは直角にもつながっていました。横並びでも駄目だったようです。当座の処置なのでしょう、木材を使って修理をしてありました。2カ所のそれぞれの棟に階段は付いていました。エレベータは確認できませんでした。

この地震のあとで、関東で工事中の建築業者に壊れないエクスパンションジョイントを作れと指示したマンション業者があったそうです。それではエクスパンションジョイントではないし、建物本体がかえって破損するのではないかと思いました。


写真 全国報道されなかった壊れたエクスパンションジョイントのある別のサーバスマンション。木材で補修してある。

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第16回 熊本地震の被害① エクスパンションジョイント1

6月に九州に行く機会があり、熊本地震の現場に寄ってきました。エクスパンションジョイントが壊れたと報道されたサーバスマンションの最寄り駅はJR豊肥本線平成駅です。駅名から想像するに新興の住宅地なのかもしれません。繁華街もなく、住宅密集地域でもありませんでした。元が水田だったのか、畑だったのか分かりませんでした。駅の近くの住宅地では屋根の瓦が一部落ちている家は数軒で、ほかの破損は見受けられませんでした。

エクスパンションジョイントが壊れたと報道されたマンションは駅から1~2分のところにありました。エクスパンションジョイントで結ばれた二つの棟は直角に建っていたので、二つの棟の方向の異なる振動でジョイントが壊れやすかったのでしょう。エクスパンションジョイントは二つの建物を繋ぎながらも地震の際に建物同士お互い影響し合わない構造物なので正しく機能したといえます。しかし第12回で述べたように非常時に壊れてしまうのであれば2棟をエクスパンションジョイントで繋いで「一」の建物とするのはやはり論理的に無理があります。

壊れたエクスパンションジョイントはすでに足場が組まれ囲われており、外からは全く見ることはできませんでした。マンション玄関前の地面と玄関床との間に段差ができていました。1棟にエレベータも階段もない常盤9丁目のマンションと違って両方の棟に、階段があり、一応の生活基盤は守られていました。エレベーターが両棟にあるか否かは外からは確認できませんでした。

地震による壊れた家具などは別扱いらしく敷地の入り口に地震によるごみだけの収集所が設けられていました。町内にも同じような収集場所がありました。

写真 エクスパンションジョイントを補修中のサーバスマンション

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第15回地上げのテクニック3

地主にマンションにするから契約を更新しない立ち退いてくれと言われた借地人がいました。ちゃんと地代を払ってきていれば、居続ける権利はありますが、高い借地契約更新料を求められたりして、よほど強い意志がないと断れないものです。そういう借地人でなく、自分で土地・家屋を所有している人で、すぐ南に高いマンションが建つわけでもなく、日照被害もない人が地上げされました。よほど好条件だったと思われます。

表向き自分は立ち退かないと言っていて実は仮契約をしていた借地人で、さらに高級車を購入した人がいました。

あなたの回りの家は皆さん売って引っ越すから、あなたも乗り遅れないようにとの地上げ屋の話を信じて売りを急いだ人がいました。回りの家々に聞いてみれば、すぐ嘘だと分かったと思いますが。

地上げられた人は好条件で契約したつもりだったでしょう。しかし転居後の様子を見ると、庭付きの家に住んでいたのに、より狭くなったマンションになった、あるいは庭付きの家に住めても遙かに都心から離れたところになったとか、条件の悪い転居先しか見いだせていませんでした。現状がとてもいい物件だから高価格を提示されたわけで、なかなかそういう物件は探してもないものです。

また仮契約がすむと、地上げ屋から要求されて、契約前には言われてなかった隣接する家との細かい交渉をさせられている家もありました。昔は境界線を厳密に考えずに塀を造ったり、水道、ガスなど他人の敷地の中を通したりしていましたから、それを是正する工事をしなくては地上げ屋の仕事は完了しないのです。

地上げ屋の言うことを鵜呑みにするのではなく、自分がどんな家に住みたいかをよく考えて、そのような家がよそに実際にあるのか確かめてから契約することをお勧めします。(あ)

写真:土地付きの家を求める宣伝。

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第14回地上げのテクニック2

地上げの攻勢にあった人が「うちみたいに古い家が狙われるんだよね。手入れもしてないから」と言っていました。

地上げにあった家を見てみたらシロアリにやられても修理せず、そのまま住んでいた様子が見られました。家を建て直さなくてはと悩みながら時間がたってしまったところで、地上げは渡りに船だったのでしょう。

また別の人は地上げ屋に「家が築50年近くたつので今後長く住むためには、屋根の補修に約100万円、老朽化した排水管などの取り替えに約50万円、給湯設備の交換に約50万円その他総計約数百万円はかかる」と言われ地上げ屋の負担で別の場所に家を新築するから土地を売れと迫られたそうです。そんな修理にお金がかかるなんて、じゃあいっそ売ろうかという気持ちにさせようというわけです。そんな地上げ屋の言葉から家の傷みが不安になり、割高な家の修理の売り込みも当然と思えて、売り込みに乗せられてしまった例がありました。

普段から家の手入れをまめにしておくことが必要です。そうしているうちに良心的な職人と知り合うことも出来、安心して安い修理をたのめるようになるでしょう。そうすることで地上げの攻勢に合わないですむかもしれません。(あ)

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写真:家の修理の宣伝