第21回 塀について(2)
阪神・淡路大震災の時も、多くのブロック塀が倒れ、神戸市相楽園の主客門は倒れていないのに、脇の長い漆喰壁の塀は壊れるなどの被害を見ました。高速道路も倒れていました。長い建造物は地震の波に耐えられないと思いました。建築基準法施工例の2.2メートル以下の高さでもブロック塀が倒れない保証はありません。子どもが歩いていたら怖いと思いました。例えばコンクリート製のブロック塀は1メートルまでとして、上にアルミ製などのフェンスや木製の塀などとするというような条例は作れないものかと思いました。東京都は基準が厳しいと聞いたことがあります。調べてみたいと思います。
写真 壊れなかった主客門、漆喰壁の塀は壊れた(1995年3月撮影)。修復された主客門と漆喰壁の塀(1998年3月撮影)
第19回 熊本地震の被害④
熊本市東部に隣接する益城町に行きました。宮園地区や堂園地区を通る県道28号はうねり、ひび割れ、多くの家が倒壊していました。その中には古い家だけではなく新しい家も、鉄筋コンクリートの建物もありました。平屋の家は比較的残っていました。こんなに激しい揺れを経験した住民の人たちの恐怖はいかばかりであっただろうと思いました。
立派な瓦葺きの2階建て和風建築の1階部分が倒壊しているのを幾つも見ました。工法は近代工法で伝統建築ではありませんでした。もし揺れた際に瓦が落ちて重量を減らすことができ、また土台がコンクリートでなく石場立てで免震効果がはたらいたらどうだったのかと思いましたが、石場立ての伝統建築は残った中にも倒壊した中にもありませんでした。
営業している食堂が1軒ありました。平屋の木造建築でした。食器は壊れ建物にひびが入ったとご主人は言っていましたが、店の外も中も綺麗に見えました。
写真 2016年6月撮影
第17回 熊本地震の被害② エクスパンションジョイント2
エクスパンションジョイントが壊れたマンションと同じサーバスマンションが歩いて数分のところにもう2カ所建っていたので行ってみました。いずれもそれぞれ複数棟をエクスパンションジョイントで結んだもので、その2カ所のマンションのエクスパンションジョイントも壊れていました。一つは2棟が横に並び、もう一つは直角にもつながっていました。横並びでも駄目だったようです。当座の処置なのでしょう、木材を使って修理をしてありました。2カ所のそれぞれの棟に階段は付いていました。エレベータは確認できませんでした。
この地震のあとで、関東で工事中の建築業者に壊れないエクスパンションジョイントを作れと指示したマンション業者があったそうです。それではエクスパンションジョイントではないし、建物本体がかえって破損するのではないかと思いました。
写真 全国報道されなかった壊れたエクスパンションジョイントのある別のサーバスマンション。木材で補修してある。
第16回 熊本地震の被害① エクスパンションジョイント1
6月に九州に行く機会があり、熊本地震の現場に寄ってきました。エクスパンションジョイントが壊れたと報道されたサーバスマンションの最寄り駅はJR豊肥本線平成駅です。駅名から想像するに新興の住宅地なのかもしれません。繁華街もなく、住宅密集地域でもありませんでした。元が水田だったのか、畑だったのか分かりませんでした。駅の近くの住宅地では屋根の瓦が一部落ちている家は数軒で、ほかの破損は見受けられませんでした。
エクスパンションジョイントが壊れたと報道されたマンションは駅から1~2分のところにありました。エクスパンションジョイントで結ばれた二つの棟は直角に建っていたので、二つの棟の方向の異なる振動でジョイントが壊れやすかったのでしょう。エクスパンションジョイントは二つの建物を繋ぎながらも地震の際に建物同士お互い影響し合わない構造物なので正しく機能したといえます。しかし第12回で述べたように非常時に壊れてしまうのであれば2棟をエクスパンションジョイントで繋いで「一」の建物とするのはやはり論理的に無理があります。
壊れたエクスパンションジョイントはすでに足場が組まれ囲われており、外からは全く見ることはできませんでした。マンション玄関前の地面と玄関床との間に段差ができていました。1棟にエレベータも階段もない常盤9丁目のマンションと違って両方の棟に、階段があり、一応の生活基盤は守られていました。エレベーターが両棟にあるか否かは外からは確認できませんでした。
地震による壊れた家具などは別扱いらしく敷地の入り口に地震によるごみだけの収集所が設けられていました。町内にも同じような収集場所がありました。
写真 エクスパンションジョイントを補修中のサーバスマンション